呪われた夜(One Of These Nights) その3
気になっていた隣の課のあの子のことだけど、新入社員のぼくにはまだ彼女の見かけしか知るすべがなく、もどかしい日々を送っていた。
そんな時、職場の先輩女子3人と、ぼくひとりとの合わせて4人で、アフター5に会食の機会があり、帰りの車内・・・話題が彼女のことになる。
当然、ぼくの耳は ダンボ状態
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呪われた夜3
当日、クルマを出したのはぼくで、もちろん運転もそう。
「デートカー」のプレリュードに大人4人をつめこみ、トンカツ屋へは往復で約一時間のドライブ。
道は時間帯の割には思ったよりも空いていて、快適にクルマを走らせる事ができ、なじみのトンカツ屋にも皆が満足してくれた。
ただし、音楽は「ベスト・オブ・イーグルス」を選んでみたものの、先輩女子にはあまりイーグルスにはあまりウケがよくないというか、洋楽に関心がなさそうな様子。
アルバムが折り返しての、呪われた夜のイントロ部分では、
「なんか、〇〇〇みたいだよねこの曲」
てなちょっと否定的な声も聞かれ、イーグルスにはまっていたぼくをすこし落ち込ませた。
落ちていく時は早いもの。
このアルバムの曲順で行くと、次は「ホテル・カリフォルニア」で、みんなが知っているマスターピース、すなわち名曲なんだけど、これがかかる前に、会社の最寄り駅に着いてしまい解散となってしまった。
普段より空いていた道のせいだろう。
「お疲れさまでしたぁ」
と笑顔で言いつつも、そのときのぼくは顔が少し引きつっていたかもしれない。
なぜなら、さっき聞いてしまったことばが頭から離れないからだ。
「そういえばさぁ、あの子の二次会だけど」
「二次会は何着ていこうかな」
・・・・・・
「えっ、二次会ってもしかして」
「ガビーン」
近日彼女は結婚するらしく、お相手は会社の人間なので社内結婚という事らしい。
「天使のようなほほえみ」
の正体は結婚が決まっていたからだったのでしょうか・・・結婚式のその日、女のひとは誰もがよりキレイになるという伝説。
なにか、男をひきつける生存の本能というか、偉大な遺伝子のつながりのなせる業というか、もしかするとホルモンのせいだったかな・・そんなとりとめもない事がふつふつと頭に浮かんだ。
帰り道、家までは20分ぐらいの道のり。
満月が高さを増してサンルーフから見え隠れし、冷たい風が髪をなでていく。
こころは砂漠・・・そして頭の中ではさっきの、「呪われた夜」のおどろおどろしいイントロが何度もくりかえしている。
オーディオから流れてくる音楽も耳には入ってこない。
彼女がほんとうに好きなら、結婚してようがしてまいが関係ないと今は思えるけど、社会や会社に毒されつつあった当事のぼくは、恋愛の基準を見失っていた。
天使か、悪魔か、そんなことよりも彼女が売約済みということだけで判断してしまう、打算的な自分が小さく思える。
いちどハマってしまうと抜け出せない、こんなつまらない考え方。
これは会社や社会に対しても同じ事が言えるのかもしれなくて、なかなか離れようにも離れられない。
駆け足の人生を走らされてしまう、無駄に時をここで過ごしてしまう前に、出口を探さないといけないようだ。
おしまい
>>> ここに出口があるかも?
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あとがき
「はじめに」にも書きましたが、2016年に亡くなったイーグルスのグレン・フライを偲んで、呪われた夜(One Of These Nights)という、このバンドのアルバム名を題に借りて、ぼくがイーグルスにはまっていた頃のストーリーを書きました。遊び心で、途中にイーグルスの曲名がちりばめてあります。
・呪われた夜 One of These Nights (1975年)
・ホテル・カリフォルニア Hotel California (1976年)
・駆け足の人生 Life in the fast lane (1976年)
おまけ
「ニュー・キッド・イン・タウン」
亡くなった「グレン・フライ」がリード・ボーカル。
全米1位獲得シングルであり、グラミー賞の最優秀ボーカル・アレンジメント賞を受賞した、ハーモニーが素敵な、あまり暗さの無い曲です。
「ホテル・カリフォルニア」が悪夢だとしたら、「呪われた夜」はその前奏(プレリュード)と思えますが、この2曲のあとに、これを聴くとホッとします。
このベスト版がまた絶妙な曲順なのです
・呪われた夜
・ホテル・カリフォルニア
・ニュー・キッド・イン・タウン
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