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ショート・ストーリー 『 ひとすじあざやかに輝きおちる 』 2

読みもの

『ひとすじあざやかに輝きおちる』ショート・ストーリー

 

 

「新しい車ってどうも落ち着かなくてな、古いクルマのほうがなんか居心地がいいんだ」

これはオヤジのよく言うセリフ。

若いぼくには、ずっと意味不明だったけれど、デザイナーの駆け出しとしてインテリアのからむ仕事に携わりはじめたぼくは、人の落ち着ける場所というものの大事さを意識しはじめたのか、ようやく最近この言葉が少しだけわかりかけた気がした。

デジタルものがありふれた時代に育ってきたぼくだけれど、たしかに新しいことだけがいいことばかりじゃないって、最近すこし思うようになったかもしれない。

たとえばCGばっかの映画とかは、なんか不自然に思えて好きじゃないし、疲れるもの。

 

 

『ひとすじあざやかに輝きおちる』前回話

ショート・ストーリー 【ひとすじあざやかに輝きおちる】
2台の古いクルマと、それをとりまく家族のストーリー。 クルマ大好きな父だけど、なぜか僕はクルマとメカには弱い。 いまは亡き母。 姉も遠い国にいる。 ある晴れた暑い休日、僕が久しぶりに実家に行くとせっせとクルマを磨く父がいて、そして物語が動き始める

 


 

「これさ61年式なんだよ」

オヤジが差し入れの良く冷えたコーラを干しながらぼそっと言った。

昭和61年じゃないだろ、西暦だろうな。 1961年だ。
ジャガーのeタイプとかいうオヤジのクルマ。
ケネディって人が、たしかアメリカの大統領になったくらいの年かな。

この見た目というかフォルムは、なんというか、その流麗さとでも言ったらいいのか、デザイナーのはしくれで、クルマに疎いぼくでも感じるものがある。
最近の車を見てるとぼくは疲れてしまうけれど、これは見ていて目が休まる気がする。

1961年といえば昭和36年で、なんだ亡くなった母と同い年じゃないか。
だからあんなにアレなのか、再婚相手も探そうともせずに手をかけるのか。
そろそろいい相手をみつけてもいい頃だとも思うんだけどな・・

母が不慮の事故で亡くなって、あれから5年。
姉ちゃんもその同じ年に彼氏と別れ、傷心のまま海外へ飛び立ってしまい、音信不通がしばらくつづいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

・コカコーラ レギュラー瓶


 

それからすこし経ってから、オヤジはなにか思い立ったように、この61年式のジャガーeタイプを探し始めて、どこからか手に入れてきた。

ようやく姉と連絡が回復しはじめたのは、ここ一年ぐらいのことで、姉ちゃん、なんでも子供が生まれて、外人の旦那さんと子供とで家族そろって、日本に明日帰ってくることになった。

今日は土曜日。

今夜はオヤジと男二人で水入らず、ぼくはあまり強くはないのだけれど、一緒に酒でも飲んで、ここに泊まって、明日、姉ちゃんを空港へ迎えに行くとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・(ポーター) PORTER トロリーバッグS 25L [TIME/タイム]

 


 

「旦那になる彼氏もいるからな、お前のクルマで行くぞ」

「赤ん坊もいれて5人だ」

あんなにせっせと磨いていたから、ジャガーで行くのかと思ったけれど、さすがにコレに5人は狭くてムリだろうな。
乗車定員なんてところはパッと思いつかない。 クルマには疎いぼく。

最近の生活臭がただようような車とはぜんぜん違う、このジャガーのeタイプってクルマの見た目重視の潔さ。

はじめてオヤジにこれを見せられたときは、ただ単に物理的に移動するものじゃなくて、夢の世界へ連れて行ってくれそうな乗り物のイメージがしたものだ。

そうそう、はなしはハチロクに戻って、明日はこれで行くんだった。
姉ちゃんから預かっているクルマだ。

ジャガーと比べてしまうとこれは実用車チックに思えるけれど、これはこれでスッキリまとまっていて、ぼくは気に入っている。

最近の車とくらべて、なりはちいさく、車内は狭そうに見えるけれど、オヤジが認識してるとおり、いちおう5人乗りなのだ。

 

 

 

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その日は、朝から雨になった。

 

 

 

 

『ひとすじあざやかに輝きおちる』 3 につづく

 

 

 

『ひとすじあざやかに輝きおちる』ショート・ストーリー

 

2台の古いクルマとそれをとりまく家族のストーリー。クルマ大好きな父、僕はクルマとメカには弱い。いまは亡き母。姉も遠い国にいる。ある晴れた暑い日に僕が久しぶりに実家に行くとせっせとジャグワーEタイプを磨く父がいて、そして物語が動き始める。

『ひとすじあざやかに輝きおちる』
『ひとすじあざやかに輝きおちる』2

 

ショート・ストーリー 『 ひとすじあざやかに輝きおちる 』 3
雨のなか空港へは父がドライブし、やさしいGの運転で雨粒がハチロクのボンネットで踊る。 離れ離れになっていた家族の再開のとき。 人ごみの中から、ぼくの知らないいかつい感じで近寄りがたい雰囲気のガイジンが近寄ってきた・・・

 



 

 

 

 

 

 

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