あの夏、あの雲を、彼女と追いかける パート5

コラムと読みもの
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前回までのあらすじ

カンカン照りの真夏の日差しの下、内房線がゆったりとしたリズムで南へむかう。

行く手に入道雲がわきたち、ボックス席のふたりの関心を誘った。

■ 前回話

あの夏、あの雲を、彼女と追いかける パート4
前回までのあらすじ都会をあとにして、夏の房総にむかうふたり。鈍行をのりつぎ、平日の人の流れとは逆の方向に、終点をめざし、その先の海へ。■ 前回話 パート3すでに真夏日、30度超え駅の外は日差しが既に強くなっていて、気温はもう30度以上あるの

カーブを行く電車は生き物みたい

列車がまるで生き物のように車体をくねらせて海沿いのカーブを行く。

カンカン照りの夏の日。

前方に見えている入道雲がさらに成長し、行き場がなくなった上の方が左右に広がった。

底は暗くて進行方向に立ちふさがる。 このまま行くと追いつくかもしれない。

雲が成長し、そして変化していく様は息を飲む美しさで見ていて飽きる事がなかった。

彼女の不思議

そして目の前の彼女。

彼女はどこを見ていて、何を考えていたのだろうか。

長旅だが、疲れた様子も見せず、退屈しているそぶりも見せない。

ボックスシートのひじかけに肘をついて、手のひらにあごをのせて、それがすこし口元をふさいでいてた。

それがリラックスをしていたのか、彼女のお得意のポーズなのかは分からない。

微妙な表情をしていた。

お互いにあいかわらず言葉は少ないけど、存在は気にしている。

でも意識しすぎる事は無い。 そんな不思議な空気が二人を包んでいた。

力行、惰行、停車、また発進して雲に追いすがる

電車が力行し、スピードを上げていくと雲に追いつきそうな気配。

惰行に入りすこしづつ速度が落ちて行き、そして駅に停車するとすこし離される。

また、発進して雲に追いすがりはじめる。

そして、停車する毎にすこし離される。

いつのまにかぼくの頭の中では雲と追いかけっこになっていた。

次の駅は特急の通過待ちのため長めの停車となり、雲がややリードして先に行く。

 

パート5 おしまい
・この記事は過去にSo-netブログに掲載したものを転記しました ▽ 投稿日 ▽
2012/8/19

 

■ 次回話 ・最終回

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