「僕のウェイガー、1億円もしたんだけどな・・」
「僕のマスティフなんて、3億円さ」
今よりもちょっとだけ未来だけど、たまたま成功してお金だけあるおバカちゃんていうのがいるのは世の中が進んでもあまり変わらない。
自動運転のチャーター機で宇宙旅行に無理やりのペット同伴。
眺めはもう飽きたし無重力なんて気持ち悪いだけと強がりを言いあっている
<<<前回のお話
貸切のチャーター機がドッキングを完了したその先に、
< ウェルカム >
と書いてある、データベースには認識されない謎のステーションのハッチ。
全体的にいくぶん宇宙焼けしているけれど、肝心の文字は誰かが拭いたのか、カンバンを重ね塗りしたのか、明瞭に読み取れる状態。
与圧が完了したグリーンランプを確かめつつハッチをすこし開けると、「シュッ」と少し音がした。 わずかな気圧差のせいだろう。
それから重たい蓋をゆっくりと大きく開けて、人が通れるようにし、その先の微重力セクションのチューブを浮かびながらくぐりぬけて行く。
気温はこちらのほうが高いようで、その空気にはこころなしか肉を焼いたようないい匂いがしてきて食欲をそそった。
おいしい食べ物にありつけるかもしれないとの期待が2人によぎる。
その先に部屋があり、入り口に
こうある。
・ルール
< 当ステーションでのルールをご了承の上、お進みください >
というディスプレイの表示がされていた。
「ルールかぁ、まぁしょうがないな、ましなものが食えるならば」
という風に2人はとらえ、チューブの先の扉を開け、部屋に入った。
部屋の中には、
・ルール
< 宇宙服はここで脱いでください >
との案内があり、その部屋には来た扉以外に、ふたつの扉があって、
「シャワールーム」「調理室」と書かれた部屋へとそれぞれつながっているようだ。
「ルールね、わかったからさ、ああ早くなんか喰いてえなぁ」
宇宙服をもどかしく、やや手間取りながら脱いでいた2人に、
・ルール
<ソニックシャワーを浴びて、シャンプー、できれば歯も磨いてから調理室へお進みください>
とディスプレイ表示がなされた。
「シャワーかぁ、めんどくせえな・・、まぁルールならしょうがないか」
「食事の前にリフレッシュといこうぜ」
ともう一人が言う。
なにせ地上を発ってから、シャワーなんてものはしばらく浴びれなくて、こんなに汗を肌に残したのは何年、十数年無かったかもしれないよ、なんて話になる。
そうしてシャワールームを終えて、部屋に戻ると2人分の着替えが用意されていた。
トランクス一枚だけのシンプルなつくりだけど、この暖かなステーションの環境に合わせたものだろうか、南国のリゾート気分か。
ただ、この繊維というか、素材はなんなんだろう、紙のようにゴワゴワしていて、肌触りがあまりよくない。
「なんだこの生地はひどいな、客をなめてるな」
「このステーション業者の親会社にあとでクレームをつけといてやろう」
「こんな会社つぶしちまえよ、そのあとで買収だ」
「ルールとか、まったくけしからんね」
何事もお金で解決してきたであろう彼らの寒い会話はこんな感じ。
でも、口で強がる彼らの心は、
「・・リサイクル素材かな?」
「何か食品を包む素材でこんな質のようなものがあったような気がする」
「食うだけ食ったら、こんなところは早く退散だ」
とおぼろげな声を発していた。
そうこうして、トランクスだけに着替えた2人は「調理室」へと進んだ。
金の力にあかせて宇宙旅行にやってきた、成り上がりのイケメン二人にトラブルが起き、地上から孤立してしまう。
その後運良く宇宙ステーションに遭遇し、ドッキングはしたものの、彼らがまずしたのは、通信回復や機器の修理よりも、自分たちの食欲を満たすための行動だった。
緊急用の宇宙食はたくさん積んでいて当分飢えることは無いにもかかわらず・・・
苦労を知らず、およそ弱いものの立場など、どこ吹く風という感じの強がる彼ら。 宇宙にむりやり連れてこられて、瀕死な二匹のペットの容態が案じられる。
>>>次回話
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