某アワード用に書いたものを公開します。
「おとぎ話や昔話、民話、小説などをもとに創作したショートストーリー、アレンジやスピンオフ、新釈作品」
とお題にありましたので、オリジナルのストーリーではありませんし、カンの良い方は途中で、
「ああ、あの話の焼き直しか・・」
と結末が見えてしまうキライがあるかもしれませんが、どうぞお付き合いくださいませ。
投稿日2020-04-18
「ウェルカム」
今よりもちょっとだけ未来のお話。
若くして成功し、財をなした2人のイケメン青年実業家。
自動運転のチャーター機で宇宙旅行にやっては来たものの、眺めはもう見飽きたし、無重力なんて気持ち悪いだけで、ここで悟りを開いた宇宙飛行士なんてヤツらの気がしれないなんて、二人とも強がりを言いあっている。
2人だけの貸切と言っていいチャーター機とはいえ、ペットの持ち込みなど原則出来ないはずなのだけれど、金の力にあかせて、運営業者に反対をされながらもそれぞれに連れてくることを可能にしていた。
案の定、無重力の訓練を受けれていない動物の彼らは、その環境に耐えられず2匹ともかなり弱ってきていてるもかかわらず、
「僕のウェイガー、1億円もしたんだけどな」
「僕のマスティフなんて、3億円さ」
とペットの状態など気にもとめず、金銭的な損失を気にしている2人だった。
そしていま、地球周回軌道上にいる彼らには宇宙嵐がせまっていて、それのせいかは不明だけれど、地上との通信が途だえてしまっている。
それ以外にも、もしかしてスペースデブリか何かが機体に衝突し、どこかの機器がヤラレたせいかもしれない。
オーロラがどんどん輝きを増していく宇宙空間の異様な雰囲気にすこし気持ちがあせり、再度しつこく通信をこころみるのだけれど、地上との交信は回復せず帰還はしばらくできそうにない。
食料もちろんは十分に積んでいるのだけれど、こんな宇宙食は喰い飽きたといわんばかりの彼らだった。
そんな時、無人で自動制御の運転席から警告音がして、
「宇宙ステーションが接近し、ドッキング可能な領域に入った」
と音声で告げてきた。
それはチャーター機のデータベースでは認識されないステーションだったけれども、いくつかのセクションから成っていると思われるこの大きめのステーションは、それぞれに整備、通信、補給などのサービスが受けれそうな雰囲気が漂っていた。
そんな訳で、
チャーター機をステーションに寄せていく指示を出し、近づいていくと、
< cuisine >
と読める看板があるセクションが見えてきた。
漢字も併記されていて、食ナントカと書いてあるみたいだけれど看板が煤けていて読めずに、
< cuisine 食ナントカ >
とまでしかここからは見えない。
「 cuisine って 料理の意味だろ? よくホテルとかで見るじゃないか」
きっと宇宙食よりまともなものを食わせてくれるだろうとの思いに、2人は、通信や整備よりも先に、その看板の近くのハッチに向け、自動でドッキングの指示を出したのだ。
貸切のチャーター機がドッキングを完了したその先に、
< ウェルカム >
と書いてある、データベースには認識されない謎のステーション
与圧が完了したグリーンランプを確かめつつハッチをすこし開けると、「シュッ」と少し音がし、空気にはこころなしか肉を焼いたようないい匂いがしてきて食欲をそそった。
おいしい食べ物にありつけるかもしれないとの期待が・・・
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